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appetite

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渡辺ペコが手がける「第三次性徴白書」。当然ながら、今回も重い。

もちろん、これまでの2巻も読んできたのだが、
このブログに感想が残されていないのは
あまりのヘビーさに打ちひしがれてしまい書く気になれなかったから。
それくらい重い…と書くと敬遠されてしまいそうだけど、中身のある作品とも言える。

引き続き、味わいたくはない緊張感に満ちていて、
どの登場人物の状況も一歩間違えれば自分にも起こりうるような他人事ではないものばかり。
故に、ついつい自己投影してしまい、追体験をして、心は動揺。
結果軽い疲労感を覚えるほどだ。

だが、改まって言うのも変な話だが、自分は男性である。
故に、女性の問題(殊に身体のことになると)については、
感情移入や共感は仕切れないというのも事実。
だから、どうしても自分は「コーヘー」でいるしかない。
張本人でありながら身体には傷一つつかない、とてもズルい立場の人間の。
その(わかりたくてもわかれない、わからなくていいならわかりたくない)距離感が、
突き放されたような印象を与えてくる。

話は変わって、この作品の特徴の一つに「食」のイメージがある。
サブタイトルにも料理名や食材名が使われていたり
食事のシーンが繰り返し出てきたりするとともに、
食べ物がメタファーやモノローグの端緒として機能しているのだ。

言うまでもなく「命」がテーマの一つになっている本作において、
「食」が扱われていることは、そのまま「生」という大きな題材を想起させる。
そして、その「生」のイメージの蓄積はいつしか「生々しい」へと姿を変える。
ここにある質感や温度も、重さを作り出しているのは間違いないところだろう。

さて、少し気が早いかもしれないが、この話はどう終わるのだろうと考えてしまう。
こんなにも傷つけあって、ハッピー・エンドなんてありえるのだろうか。
逆に、ハッピー・エンドではないとしたら、あまりにも救いがないのではないか、とか。

考えうる「最悪の事態」を次から次に積み重ねて、今のところ減速なし。
作品としては良いことなのだけれど、それがかえって恐ろしい。
by taku_yoshioka | 2011-08-29 00:42 | comic

Ok, it's the stylish century


by takuyoshioka