人気ブログランキング | 話題のタグを見る

an alien on the planet

an alien on the planet _e0191371_018728.jpg

90年代初頭から半ばにかけて、週刊少年ジャンプは絶頂期を迎えた。
"DRAGON BALL"や"SLUM DANK"を筆頭に掲載作品は軒並み大人気。
隆盛を極めた各作品は次々にメディアミックスの対象となり、
範囲の拡大に伴って子供たちの「ヒーロー」となっていった。

「ヒーロー」というのは輝かしい一方で、窮屈な立場でもある。
模範的なメインストリームであることを求められ続けてしまうから。

そして、それは"幽☆遊☆白書"も例外ではなかったのだろう。
終盤の雰囲気からも何となく推し量ることが出来るけれども、
堅苦しい思いをしながらなんとか書き切ったように思える。

さて、前置きが長くなりましたが、冨樫義博がこの「呪縛」から解き放たれ、
ある種リハビリテーション的に自分の思うがままにペンを走らせた"レベルE"。
月1の連載というマイペースな環境のもと、
アシスタントの手を借りずに独力でコミックス3巻分を描き上げた。

SF映画を想起させるようなオープニングから重厚なトーンの画風と台詞が続き
クールなドラマ路線の作品かと思いきや、突飛でナンセンスなギャグで空気を一変。
と思えば再びシリアスな雰囲気に戻ってみたりと変幻自在な展開は、
作中の登場人物はおろか、読み手までも翻弄してくる。
この怒濤の如く繰り返される緊張と緩和、
そして、トゥーマッチ気味の書き込み密度の高い画には引き込まれると同時に、
1話終わるごとに心地よい疲れすら覚える程のエネルギーがある。

何と言っても、「バカ王子」のキャラクターが抜群に良い。
容姿端麗、頭脳明晰、そこに天賦のいやらしさが加わる究極の悦楽主義者。
それでいて決して悪人ではないところが逆に扱いづらい絶妙の設定だ。

このような一度見れば忘れられない程濃すぎる登場人物や、
スピード感のあるギャグの応酬と長台詞のコントラストなどから
舞台的な趣もある作品とも言える。
ミュージカルでの普通の台詞と歌との切り替えにも似た緩急。
なおかつリズムを保ちながら高濃度の情報を纏め上げたのはやはり凄い。

天才漫画家・冨樫義博の感性が、歪に尖って光る怪作。
ある意味、一番彼らしい作品かも。
by taku_yoshioka | 2011-01-09 00:18 | comic

Ok, it's the stylish century


by takuyoshioka