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身構えな エースのサウスポー(SOUTHPAW FLOW/DESPERADO)

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[※ネタバレあり]

準決勝を迎え、最大のピンチが七嶋を襲う。

一匹狼集団・兼六学館を下し、初出場にして見事ベスト4進出を果たした樫野高校。
しかし、その試合の最後のアウトを取る際に、慢心した七嶋は怪我を負ってしまう。
幸い、肋骨の軽微な骨折に留まり選手生命に関わる程の症状ではなかったが、
精神面への影響や動揺は大きく、試合前夜には悪夢にうなされる程。
ここまで強気の姿勢で暗黒の道を突き進んでいた七嶋が、
初めて気持ちの弱さに負けそうになり、罪悪感に苛まれる。

結局、準決勝はやむなく登板を回避することを決断。
野手としての先発出場もなく、重要な試合を残りの部員達に託す——はずだった。

ここまで樫野は、ほぼ七嶋のワンマンチームとして勝ち上がってきてきていた。
となれば、悲しいかな2番手投手・金子が通用するはずもなく、
ストライクもまともに入らないまま大量失点の後に降板。
続く3番手投手・伊藤は大差での登板という状況での開き直りからか、
ストライクを取ることはできるものの、甘い球を痛打されアウトを奪えない。
初回にして勝負が決まってしまいそうな窮地において、
樫野のマウンドに登ったのは「サウスポー」の七嶋だった。

ノックマンとの特訓以来、左投げの練習を続けているとは言え、
試合において登板するのはこれが始めて。ましてや、甲子園の準決勝である。
この緊急登板にはさしもの七嶋も普段のパフォーマンスを発揮できず、
なんとか最小失点で切り抜けるものの、1イニングだけで大きく疲弊してしまう。

今回の状況がいかに危機的であるかを象徴する現象として、
あれだけ悪目立ちしていたガーソに存在感がないことを挙げたい。
加藤の乱調を目にして試合開始早々に「死亡」した迷参謀は、
七嶋やナインを苛立たせるような采配(=余計な介入)もできずに立ち尽くす。
歴戦の無能者も流石に為す術無しといったところだ。

さて、1回の表を終えて大きなビハインドを背負った樫野。
普通に考えれば追いつき追い越すのは難しい点差だが、ここは甲子園である。
「あるある」ネタの一つとして大逆転勝利も十分に考えられる中、
どのような試合展開になっていくのか注目したい。
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by taku_yoshioka | 2013-04-09 19:46

stupid and diligent

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[※ネタバレあり]

今や、甲子園の魔物以上に樫野高校野球部を苦しめる存在となったガーソ。
前巻終盤の嫌な予感は見事に的中し、出来もしない采配による「監督対決」に乗り出す。
読者と樫高ナインの心にはため息混じりの「またか……」の想いが共有され、
作中の温度に読み手をぐっと近づける、ある意味ではこの上ない名シーン。
多くの場合、どんな嫌われキャラクターであっても、
どこかで読む者の心を擽るようなギャップを見せてくれるものだが
このガーソに関しては徹底して救いようがない無能振りを見せてくれる。
最早天晴の「無能な働き者」である。

帝城との対決は樫高リードのまま最終回を迎えるが、
あと1アウトのところで逆転もありえる大ピンチに。
1点を争う緊迫した場面を迎え、なお強かにスターとしての演出を続ける七嶋は、
逆境すらも最高の見せ場としてストレート勝負を挑む。
極めつけは偶然を装った逆球での空振り三振の奪取。
優れた野球脳による読み、導き出された解答の確度、
そしてそれを実際にやってのける制球力の全てを持ち合わせたスーパーエースは、
やはり既に高校野球の枠には収まり切らない領域に手をかけているように思える。

マニア向けの小ネタとしては、バックネット裏のスカウトのコメントが印象的。
日本ハムファイターズのスカウトである熊沢が、
七嶋をナンバーワン評価すると共に「絶対に1位でウチが獲る」とコメントしたが、
ここ数年甲子園のスターの獲得に成功しているファイターズだからこそいえる強気の発言だった。

(余談:帯について)
作品タイトルとは裏腹にと言うべきか、それともある種タイトル通りと言うべきか、
各種有名漫画ランキングになかなかノミネートされない本作は、
ついに帯において勝手に「このマンガが黒い!」なる企画をでっち上げ、
2012年度第1位であることを銘打っている。
カウンター的な立場を理解した悪賢い振る舞いはまさに七嶋そのもの。
共同してフェアを展開した「グラゼニ」と比べると日陰者の印象が強い作品だが、
向こうを張るに相応しい、当世を代表する野球漫画だと思う。
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by taku_yoshioka | 2012-12-29 14:59

super duper star

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スターは一日にして誕生する。
甲子園という大舞台であれば尚のこと、だ。

21世紀枠で選出された挑戦者として、大阪杏蔭に「下克上」を挑んだ樫高ナイン。
だが、好プレーで宇宙空間を作り出すも、ガーソの迷采配でチャンスを潰してしまう。
そのまま試合は進み、1点ビハインドで迎えた9回裏の最後の攻撃。
2アウトながらもこの日のラッキーボーイ郡に4本目のヒットが生まれ、打席に立ったのは七嶋だった。

樫高の甲子園初勝利から自身のキャリアの未来まで、全てがかかったこの場面で、
一振りでアップセットを決めてしまった彼は一躍大会の主役に躍り出る。
初出場の無名校から、最注目のプレイヤーが彗星の如く現れた瞬間だった。

これは、この試合だけに限らず大会全体を支配する主導権を手に入れたことをも意味するのだが、
七嶋はメディアを味方につけんとしたたかに理想の高校球児を演じる。
(「黒さ成分」が比較的少なかったこの巻において、ここが唯一のブラックなシーン。)

メディアというのは勝手なもので、理由はどうあれ大会が盛り上がれば盛り上がるほど良いと思っている。
よって、少なからずシナリオを用意して、その中で物語が進むことを望んでいるのだ。
またプロ野球と違い、予備知識が少ない状態で観戦することの多い甲子園大会において、
メディアが伝える情報の占めるウエイトは大きい。
チームの個性や特徴、そしてドラフトにかかってくる可能性のあるスター選手に関する報道は、
そのまま受け手の印象や観戦への動機を操作することも容易である。

つまりメディアに目をつけられた七嶋は、スターだからこそ出来る勝負のチャンスを手にした、という訳だ。
おそらく、これまで以上に観客をどのように味方につけるかがポイントになってくることだろう。
スターには、スターの戦い方があるのだ。

次なる相手はまたもや名門の帝城高校。体格からして一回り以上も樫高を上回る強豪校だ。
一方で、常連組の小林さんは樫高有利と見立て、その予想通り早々に2点を先制する。
しかしながら、好事魔多しの甲子園。樫高ベンチではガーソが怪しい動きを見せ始める。
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by taku_yoshioka | 2012-08-13 23:59 | comic

galaxy in the groove

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樫高の歴史に残る甲子園の初試合の相手は、名将・テラモン率いる大阪杏蔭高校。
その校名からプロへの輩出率、48本塁打を打っている大柄な体躯の4番・権上など、
東横に引き続き名門常連強豪校がモデルだ。
(ただ、その4番打者の性質は本物と大いに異なってはいるが。)

そのテラモン、杏蔭ベンチに目配せをする七嶋にも即座に気付く。
これは、甲子園以前に対戦したチームの監督にはなかった鋭さで、
21世紀枠の出場校の選手であろうと奢ることなく超一流だと認めるのは流石の慧眼。
そのあたり、テラモンも超一流の監督ということになるのだろう。

さて、試合はと言うと、初回の1点以降は緊迫した0行進。
よく「両エースの好投もあり〜」などとされる展開だが、
この淡々とした試合運びこそがテラモンの狙いなのである。

分水嶺となったのは6回表の樫高の守備、2死満塁から飛び出したファインプレー。
ここで甲子園のボルテージは最高潮に達し、劇場化した球場は宇宙空間と化す。
試合開始前から仕掛け続けていた七嶋の「演出」が花開いた瞬間だ。

この勢いに乗じた樫高は、9番打者のヒットで反撃の狼煙を上げる。
傾き始めた潮流を掴むことができるのか、それともテラモンの手腕によって防がれてしまうのか。
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by taku_yoshioka | 2012-04-16 01:03 | comic

originoo song clappaz

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様々なマニアックな切り口のアイデアで我々を楽しませてくれる"砂の栄冠"だが、
この作品で語られるのは、一般的な「野球の勝ち方」ではなく、
「高校野球の勝ち方」であり「甲子園の勝ち方」である。
よって、一般的な野球のセオリーとは異なる、高校野球ならでは要素がポイントになる。

この7巻のキーワードは個性と応援。

例えば、PL学園や早実、智弁和歌山に鹿実といった伝統校は、
それだけでブランドという個性を持っているし、
21世紀枠で出場してくるような文武両道を重んじる公立高校は、
強豪私立に立ち向かう公立の星としてマスコミに取り上げられる。
もしくは、個性的なフォームの選手を多数擁することで
大いに話題となった沖縄の那覇高校を思い出しても良いかもしれない。

この個性がなぜ高校野球に必要かというと、
勝ち方を持っているチームの強さ(と自信)という部分もあるのだが、
何より次に挙げる応援への多大なる影響がある。

ブラスバンドにチアリーディングなどを総動員して展開される高校野球の応援は、
味方への鼓舞だけでなく、相手へのプレッシャー要因としても機能する。
ただでさえ異常な状態で臨むことになる一発勝負のトーナメントにおいては、
たかが応援と一笑に付すことは出来ない重要な要素なのだ。

個性を手に入れた名物チームには固定ファンがつき、
固定ファンがつけば応援の規模は大きくなり、
応援の規模が大きくなればその応援も一つの個性となり…、
という好循環が強豪校には備わっている。
樫野はどこまでそれに近づけるのか。

そして、その裏で密かにそして着々と進む七嶋の左投げの練習。
"ドカベン"の「わびすけ」木下に始まり"新・巨人の星"の冒頭で告げられる仰天の裏設定、
そして"MAJOR"での茂野吾郎の左投げ転向と、
いずれも少なからず強引であった野球マンガ内の両投げ投手の系譜に、
また新たなこじ付けとともにニューヒーローが登場するかと思うと、
リアリティの追求云々を全く別にして胸は高鳴るばかり。


(余談)
非常に細かい描写だが、試合終了後の拍手のシーンの擬音として、
「パチパチ」に混じって所々「ポコポコ」があることに驚いた。
実際に球場で応援したことや、それを見たことがある人ならわかると思うが、
メガホンを手で叩くとこのような音になるのだ。芸が細かい。
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by taku_yoshioka | 2012-03-04 23:59 | comic

paint it black

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秋季大会の準優勝で甲子園出場を半分手中にし、チーム作りが軌道に乗り始めたところで、
レベルアップを目指す樫高野球部にエキセントリックなキーパーソンが登場する。

人呼んで、伝説のノックマン。

サングラスとMIZUNO PROのウインドシャツを身に纏った米国帰りのその男は、
金銭さえ積めば超一球品のノックと指導を施してくれるという、
胡散臭さに溢れるかなりトンデモなキャラクター。
だが、この振っ切れ具合はリアリティの欠如を補って余りあるだけの勢いを物語に与えてくれている。

さてこのノックマン、大口を叩くだけあって腕は確かなのだが、
その分要求額もなかなかのもので、普通の公立高校には到底払えないような金額を提示してくる。
ここで、少しずつ切り崩すように使っていた1000万円を一気に使うことになる訳だが、
逡巡する七嶋の背中を押した「共犯者」がマネージャーの遠藤蘭。
「お金ならある」と言い放ち見せた黒い笑顔は、
彼女もまたダークサイドに落ちたことの証明以外の何物でもない。

こうして一人、また一人と、七嶋の周りの人間が黒くなっていく。
しかしこのマンガ、黒くなればなるほどに面白い。
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by taku_yoshioka | 2012-01-31 23:59 | comic

get there

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主人公である七嶋裕之は、トクさんから1000万円を預かった際に本当の本気というものを学び、
自分の身を削ってでも甲子園に出場することを決意した。

それは、いかなる手段を使ってでも甲子園大会に出場するということなのだが、
「いかなる手段」とは言いつつもあくまでも選択肢の一つが金なのであって、
その使い方やその他の部分についての創意工夫があってこその1000万であることは間違いない。
(第一、お金だけで甲子園に行こうと考えた場合、1000万でさえもはした金だ。)

そういう意味では、21世紀枠での選出を目論むというアイデアは、
公立高校が甲子園に出場するという目標を達成しようとした場合に、かなりいいところをついている。
高校野球を題材にした漫画ならば、普通は正面からライバルたちとぶつかり、
勝ち抜いて勝ち抜いて夏の甲子園に出るドラマ性を前面に押し出すだろう。

しかし"砂の栄冠"ではあっさりと別ルートを選んだ。
これが、七嶋裕之の言うところの「本気」という訳だ。
出場方法は問題ではなく、求めるのは甲子園出場という結果を手に入れること。
そのためには、夏の大会の正面突破に拘る理由など何一つない。

また、エスカレートしつつある七嶋裕之のスーパー高校生ぶりは恐ろしい程で、
野球選手としての能力もさることながら、頭のキレ方が狂気の域。
流れを読み、試合を演出し、その通りにやってのけるもんだからたまらない。
作中での表現を受け、球場がステージだとすれば、まさに独り舞台と言える。
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by taku_yoshioka | 2012-01-25 23:59 | comic

perfect performer

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甲子園に行くには甲子園を知れ、甲子園を知るには甲子園を観ろ、ということで、
新チームのキャプテン七嶋裕之は、部活の連休を利用して甲子園へ。
この旅費として、件の1000万円に初めて手をつけることになる。

その甲子園において最も強烈なインパクトを残すのは、
主人公の彼ではなく、甲子園バックネット裏に陣取る「常連組」だ。
甲子園大会をある程度TV観戦したことのある者であれば
誰でも気になったことがあるであろう彼(女)らは、
本当に毎日同じような格好をして同じような席にいる。

その正体に迫りつつ、彼らを狂言回しにして、
甲子園大会の「種明かし」をしていこうというのがこの巻のポイント。
彼らによって語られる、科学的/統計的な裏打ちとは一味違う甲子園ならではのコモンセンスは、
そのどれもが納得できるであるものだとは言いがたいものの、
一方で「そうなのかもしれない」と思わされる話が多いのもまた事実だ。
この球場には魔物が棲むと言われるのも頷ける。

こうして、甲子園出場に向けて気持ちと知識を高めた七嶋は
「完璧なキャプテン」を演じつつ樫高を率いて秋季大会に臨む。
チームを育てながら勝利するという難題をクリアする彼だったが、
その内面で広がり始めた邪悪な心はすでに止められない領域に。
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by taku_yoshioka | 2012-01-21 23:59 | comic

the crown

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公立高校の野球部が甲子園に出場するというのは、なかなかに難しい。
その理由の一つに、私立との金銭面での格差がある。

それは、選手や指導者を集めるための「人件費(ブラックな部分も含めて)」や、
スカウティング能力や名門としての「格」などに限った話ではなく、
巻末企画にも記述があるように、そもそもの設備からして私立のそれと比較すると格段に劣る。
マシンも無ければバスも無く、道具も使い捨てられるほど潤沢に用意されているわけではない。
それどころか全員が定位置についての守備練習が出来るだけのグラウンドすらも無いような状況では、
トレーニングやコンディショニングにはとてもではないが資金を回す余裕は無いのだ。

では、金があれば勝てるのか?

といった発想から、1000万円の資金というオプションを加えた上で、
公立校が初の甲子園出場を目指す物語が、この"砂の栄冠"。
奇しくも、同じく「野球と金」をテーマとする"グラゼニ"もヒットしている訳だが、
高校野球を扱いながらも本作品の方がブラックな内容となっている。
(面白いのは、本作品の方において文字通り「グラウンドに銭が埋まっている」こと。)

まだ序の口ということで、1巻では舞台設定とキャラクター紹介が中心。
これからゆっくりと話を展開させていこうというところだろう。
この辺りは、ベテランの域に入った三田紀房の流石の手腕。

また、かつては"クロカン"で熱血監督を描きスマッシュヒットを飛ばした三田が、
本作ではダメ監督をキーパーソンとして登場させているところにも注目したい。
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by taku_yoshioka | 2012-01-13 23:59 | comic

Ok, it's the stylish century


by takuyoshioka

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