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mi familia

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[※ネタバレあり]

安堵。

足掛け5年に渡って連載されたこの物語の終幕に際し、
何よりも先に胸に湧き上がってきた感情はそれだ。
今にも崩壊してしまいそうだった二人の関係や環境は奇跡的なまでに急速に修復し、
迎えたのは気が抜けるほどのハッピーエンド。
結局、収まるべきところに収まったということも出来るかもしれないが、
そこに至るまでの壮絶極まりない紆余曲折を目撃してきただけに、
二人が(つまり渡辺ペコが)最悪の結末を選ばなかったことに胸を撫で下ろした。

思い返せば、作中で経過した僅か数年の間に色々な事件があった。
コーへーの浮気と妊娠に始まり、あっちゃんの不妊に新恋人の登場。
止まらない負の螺旋は同棲解消を経て一度は別れも経験した。
羅列するだけでも胸が苦しくなるほどの数々の出来事は、
春の終わりへのカウントダウンかに思えたものだ。

ついにやってきた第三次性徴期の終わり。果たして、二人は変わることが出来たと思う。
衒いなく前向きなエンディングには物足りなさはなく、希望の光が溢れている。
ラストのあっちゃんの笑顔が全てを物語っている。

辛い過去はなかったことには出来ないし、すっかり忘れてしまうことも難しい。
それでもどうにか昔話にして、または自分の糧や肥やしにして「肯定」するためには、
自分の本当の気持ちに気付いて受け入れつつ、勇気と覚悟を持って未来を掴み取るしかないのだ。

二人と、新しい家族に幸多からんことを。
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by taku_yoshioka | 2013-05-19 17:19 | comic

oppressed

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"にこたま"の最新刊を読むと、いつも胸の辺りが苦しくなる。
決して気持ちよくはなく呼吸困難にも近いこの感覚に対して、
「もう嫌だ」という言葉を最大の賛辞として贈りたい。

二人の状況は一向に良くならない。もはや、良くなる気配すら感じられない。
解れた糸を懸命に解いた結果、別の糸と絡まり始めたり、
切れて欲しくないところで切れてしまったり、見失ったり、もう無茶苦茶だ。
選択があまりにも裏目に出ると、かえって笑えてしまったりするものだが、
この話はそれすらも通り越したところの笑えなさがある。

さて、前回の記事のも記したが、本作のコピーは「第三次性徴白書」。
しかしながら、実際は登場人物の誰もが成長しない。
学んだり、知ったりすることはあっても、変わることはない。
ここが人の(もしくは成人の)本質を突き止めているようで、
渡辺ペコの淡々とした温度のタッチで描かれるとゾッとする。

それにしても、話の切れ方が毎巻絶妙だ。見事にモヤモヤしたまま終わらせてくる。
クオリティを保ちながら続いている作品だけに長く見ていたいと思いつつも、
物語中の二人と同様に早くケリをつけたいと感じてしまうのもまた事実。
連載ペース的に年1回の刊行となっているところにも焦らされ、
このままでは立派なマゾヒストになってしまいそうだ。
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by taku_yoshioka | 2012-06-15 00:21 | comic

appetite

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渡辺ペコが手がける「第三次性徴白書」。当然ながら、今回も重い。

もちろん、これまでの2巻も読んできたのだが、
このブログに感想が残されていないのは
あまりのヘビーさに打ちひしがれてしまい書く気になれなかったから。
それくらい重い…と書くと敬遠されてしまいそうだけど、中身のある作品とも言える。

引き続き、味わいたくはない緊張感に満ちていて、
どの登場人物の状況も一歩間違えれば自分にも起こりうるような他人事ではないものばかり。
故に、ついつい自己投影してしまい、追体験をして、心は動揺。
結果軽い疲労感を覚えるほどだ。

だが、改まって言うのも変な話だが、自分は男性である。
故に、女性の問題(殊に身体のことになると)については、
感情移入や共感は仕切れないというのも事実。
だから、どうしても自分は「コーヘー」でいるしかない。
張本人でありながら身体には傷一つつかない、とてもズルい立場の人間の。
その(わかりたくてもわかれない、わからなくていいならわかりたくない)距離感が、
突き放されたような印象を与えてくる。

話は変わって、この作品の特徴の一つに「食」のイメージがある。
サブタイトルにも料理名や食材名が使われていたり
食事のシーンが繰り返し出てきたりするとともに、
食べ物がメタファーやモノローグの端緒として機能しているのだ。

言うまでもなく「命」がテーマの一つになっている本作において、
「食」が扱われていることは、そのまま「生」という大きな題材を想起させる。
そして、その「生」のイメージの蓄積はいつしか「生々しい」へと姿を変える。
ここにある質感や温度も、重さを作り出しているのは間違いないところだろう。

さて、少し気が早いかもしれないが、この話はどう終わるのだろうと考えてしまう。
こんなにも傷つけあって、ハッピー・エンドなんてありえるのだろうか。
逆に、ハッピー・エンドではないとしたら、あまりにも救いがないのではないか、とか。

考えうる「最悪の事態」を次から次に積み重ねて、今のところ減速なし。
作品としては良いことなのだけれど、それがかえって恐ろしい。
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by taku_yoshioka | 2011-08-29 00:42 | comic

きらきら光っている 街かどは今日もアツレキまくっている(透明少女/NUMBER GIRL)

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これが才があるということなのか。

"透明少女"からは巷間に存在する多くの「デビュー作」によくあるような
荒削りながらもその拙さを補って余りある勢いはなく、
代わりに恐ろしいほど現行のスタイルに近い「第一歩」が感じ取れた。

その続編である"たまゆら透明少女"や"台風クラブ"は淡い恋を綴った青春譚。
"台風クラブ"の安西良平のモノローグは、
他の渡辺ペコ作品では見られなかったストレートな青春描写。
こういうのもなかなかいい。

"N浜温泉紀行"での「あるある」なドタバタ妄想パワーと、
そこから一転して我に返って突入するシリアスモードは、
一人だったことがある人(つまりみんな)共感するところがあるはず。
でも、実際にはそこまでのことは起こっていない。絶妙な現実との距離感。

ここが渡辺ペコ作品の一つの肝になっていると思う。
近いことは"ラウンダバウト"を読んだときにも感じていて、
「あるある」ネタを書いていながらも、現実味は意外と薄い。
だから、夢を持って読むことができる一方、感情も凄く共感しやすくなっている
(そして、これがつまらなくならないのも、また才能)。

"あに・いもうと"にしても"ジャグリング"にしても同様で、
そこまで大仰なことは描いていないのに、やっぱりフィクションとして読む他ない。
各ストーリーを構成する、それぞれの事象や状況、人物はあり得るとしても、
それがこんなに上手くハマって一つの「物語」になることはあり得ないから。

このリアリティー感覚を軸にすると、結構渡辺ペコ作品はいろいろな面で納得できる。
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by taku_yoshioka | 2010-12-20 21:07 | comic

membrane-membrane

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link

「間取りまんが」として創られた表題作を含む6編を収録。
ただ、コンセプトである「間取り」の必然性は感じられず、
その他の短編も含めた「部屋」にまつわる物語と捉えた方がしっくりくる。

部屋で起こること、部屋で考えること、部屋でできること。
部屋に帰りたい人、部屋に帰りたくない人、部屋に帰れない人。

部屋の数だけ人がいる、と言う程でもないけれど
東京の膜に包まれて生きる人の喜怒哀楽と群像劇が
それぞれの持つそれなりの活力とともに描かれる。

今日も東京のどこかの部屋にあるような。


(※追記)
発売前にプロモーション用に制作されたと思しき特設サイトで
「たんの三兄弟」の丹野ゆりが手がけた(という体で)曲が公開されていて、
本来想像するしかない作中の曲が聴けるのはなかなか凄いことだと思う。
世界観を正しく伝えるための気概を感じる。
そもそも短編集一冊に特設サイトを作ること自体が異例。
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by taku_yoshioka | 2010-12-08 00:39 | comic

metamorphoses

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渡辺ペコ流の変身譚を八話収録した短編集。

「変身」がテーマだと聞くとファンタジックな印象を受けるけれど、
描かれているテーマはむしろ現実的。
コンプレックス、理想、憧れ、失望、などに苛まされ、
救われなかったりすることがある方が生きていて普通。

そもそも、古くから数ある変身譚からして、
人間が心のどこかに持っている変身願望、
すなわち現状への不満と脱却を綴ったものなんだろうし。

しかし、本作には変身を否定する話もしっかり入っている。
"ラウンダバウト"には普通の男の子しかでて来なかったけれど、
本作収録の"毒りんごパイ"の西島は凄く格好いい「王子様」だ。
そして、少女漫画の中にしかいないタイプでもある気がする。
彼のような行動を実際は男の人はなかなかとることが出来ないし、
それ以前にそうすることがカッコいいとも気付けていなかったりするので。

そう考えると、結局人は変わりたいのか、変わりたくないのか、
変わらなくても良いよと言って欲しいのか。
なんていう取り留めの無いことに
久々に思いを馳せるきっかけをもらった作品でもあったのでした。
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by taku_yoshioka | 2010-06-04 06:06 | comic

round and round

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きっと、ドラマやマンガみたいに煌めいていない青春時代だって、
それはそれで光をたたえているものなんだと思う。

教室に男と女がいても必ずしも恋には落ちるわけではないし、
落ち込むようなことがあっても未熟さが幸いして深みにははまらず、
向こう見ずに好きなものに傾倒したり飽きたりしながら友達と話し、
なんとなくいろいろなことが起こるうちにあっけなく季節は巡ってしまう。

そういうところに中学生の特権みたいなものがある。
これが、高校生になるとどれも重たくて具体的になってしまうから、少し辛い。

そんな中学生のよしなしごとを綴った短編連作形式の作品。
一応主人公を据えてはいるけれど、
群像劇としての性格も持っているから飽きずに読み通せる。

一話ごとについているサブタイトルはおそらくすべてが引用で、
その引用元のセンスが少女マンガチックではないところも
中学生独特の背伸びした感覚に通じているような部分もある。
何せ、一話目から"MANGA SICK"という尖ったチョイス。
その後も"僕の右手"や"ラーメンたべたい"などと続いていって、
極めつけは第16話の"ペンと知恵の輪"。選択の妙に唸らされます。

各エピソードの感覚自体は「あるある」なんだけれど、
実際にそういうことは「ないない」というタイプのフィクションストーリー集でした。
割とオススメ。
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by taku_yoshioka | 2010-03-03 00:46 | comic

Ok, it's the stylish century


by takuyoshioka

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