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stay cold

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息が詰まるような冬の日が続く。

クライマックスが確実に近づいていることを感じさせる物語だが、
ここで一度時計の針のスピードを落とし、センター試験の前後数日の出来事を丹念に描写。
結果、これまで陽だまりのように挿入されていた箸休め的な話もなく、
次から次に展開する切なくリリカルなエピソードが否応なく胸を締め付ける。

高校3年生の1月半ば。センター試験は誰にでもやってくる。
それ故に、それぞれのこれからの歩む道が違うことを浮彫りにする。
4人はこの日もいつも通り顔を合わせながら、しかしそれでいて異なる思いを胸に、
来るべき春に向けて試験の日は過ぎていく。

連載当初から定型として続いている4ページ構成の使い方は益々磨きがかかり、
単純な起承転結だけに留まらない。今日マチ子の一つの到達点と言っても良いだろう。
特に印象的だったのは"ラストソング"と"マークシート"の2話。
前者は最終ページにインパクトの強い一枚画を持ってくるパターンの展開で、
マンガというフォーマットだからこそ可能なアングルと余白は、
みかこと緑川の(運命的な)シンクロを見事に表現している。
一方、後者は3ページを使い横長のコマを繰り返しながら2シーンを描写することによって、
未来への不安の中で混濁した緑川のメンタリティをビジュアライズ。
こんなにもマークシートと雪上の足跡のイメージを見事に重ね合わせた作家を他に知らない。

そして、この巻の悲劇の主役はナオだった。
密かに忍び寄っていた「嫌な予感」は刻々と現実になりつつあり、
それでも明るく健気に振舞う彼女の優しさや強さには心を打たれるばかり。
加えて、ここにきて突如登場した二年生女子の存在が4人の均衡に及ぼすであろう影響を鑑みるに、
桜の季節まで心の平和は訪れなさそうである。
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by taku_yoshioka | 2013-04-22 20:46 | comic

a star lily

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今日マチ子と言えば、代表作の"センネン画報"や"みかこさん"、
または"七夕委員"や"100番めの羊"など、現代に生きる女学生の柔らかな感性を描いた作品が多い。
それぞれが悩みや痛みを覚えつつも、自由で可能性に溢れた猶予期間の中で想像力の翼を広げているのだが、
そんな彼女達は"cocoon"の主人公・サンとその友人と同世代でもある。

我々は生まれる時代を選べない。

本書の発売に際し、今日マチ子は自身のTwitter上において
「『センネン画報その2』とセットで読んでいただければ
 裏表というかんじになると思います。この2年のじぶんなりの集大成。」との言葉を寄せていた。
かつては、"となりのトトロ"の公開時に"火垂るの墓"が劇場公開時には同時上映され、
同じ4歳でありながら生まれた時代が十数年違うだけで全く異なる運命を生きるメイちゃんと節子の姿が
少なからず比較されるようにして多くの人の心に残ったように、
この"cocoon"も先に挙げた作品群と合わせて受け止めることが大切な作品である。

本作の舞台は、雪が降ることのない「天国の島」。
戦地となったこの南国で、サンは看護隊に参加することになる。
しかし、食事も休養も十分に取ることができない生活の中、
ある者は衰弱し、ある者は自決し、日常のように一人また一人とこの世を去っていく友人達。
加えて、サンを襲う白い影法師———。

戦争という易からぬ題材の中でも、特にデリケートなひめゆり部隊をモチーフにしてはいるが、
これが全てではないとか、これが事実とは異なるとか、瑣末な指摘をするべき物語ではないと思う。
読みながら心に生まれた気持ちや、息が詰まりそうになる感覚を、単純に忘れずにいたい。
そう思って、8月15日はこの作品を読むことにしている。
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by taku_yoshioka | 2012-08-15 23:59 | comic

last winter

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決断のとき、なのだろう。

高校3年生の冬を過ごす4人に、そう長い時間は残されていない。
行き先が決まっていようが決まっていまいが、次の春は来てしまう。
切なくて苦しい、そして曖昧で複雑な感情が渦巻くモラトリアムも、
その時が来れば強制的に終止符は打たれてしまうのだ。

この冬みかこは、自分の本心を加藤くんに告げる。
流されるように付き合い始めた彼女にとって、初めての「告白」だった。
そして、密かに抱いていた感情を吐露したシーンがもう一つ。
センター試験を直前に控えながらもはっきりとした進路が決まらず、
誰にも告げず静かに焦りを感じていたみかこが、母の前で涙を流したのだ。
常に飄々と、そして平然としてマイペースな印象のあるみかこだが、
普通の18歳として普通の悩みを抱えていたことを、これまた初めて見せた一幕である。

このシーンから思い出したのは、"耳をすませば"で悩みながら小説を書いた雫の姿。
明確な夢と目標を見つけて邁進する聖司に対し、どこか受験から逃げるように小説に取り組んだ雫。
納得がいかないままどうにか書き上げた処女作を聖司の祖父に読んでもらい、
暖かい言葉をかけてもらった時には、彼女も大粒の涙を流したのだった。

「受験生」になった途端に突きつけられた選択への戸惑いは、
彼女達が感受性豊かであったからこそ余計に辛いものであったに違いない。
だからこそ、その不確定な状況や未来をそのまま受け入れてくれる
「わからないって一番いい時間よ」「なんにだってなれるんだから」
とのみかこの母の台詞は、ざわついた季節の中で一際暖かく心に残る。

みかこはこの冬のあとも「私たちは続いていく」と感じているが、それも定かではない。
意外なほどあっけなく、新しい環境では新しい仲間と時間をともに過ごすというのはよくある話だ。
後から振り返ってみて、あのときの別れが最後だった、ということも少なくない。
そんなことすら知る由もないうら若き少女の冬は、確実に終わりに近づいている。

4人にはどんな春が来るのか。


(余談)
カトウくんが可哀想になってきた途端に愛着が湧いてきてしまったのだが、
自己憐憫が端的に現れているようで面映い。
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by taku_yoshioka | 2012-08-07 23:59 | comic

a view from her room

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link

ナタリーに掲載された今日マチ子のインタビュー。
webとは言えなかなかのボリュームで、興味深いこともいくつか語られている。

中でも、以前から"センネン画報"に感じていた「短歌的」な作風に対し、
本人の口から「俳句的」という回答を聞くことができたのは個人的に非常に大きな収穫。
(少し話は反れるが"ダ・ヴィンチ"誌で連載中の百人一首の1P漫画化は、
作風を非常に上手く生かしたナイスマッチングな企画だったと思う。)

また、処女作中の処女作ともいえる、美大予備校時代の通学時間に描いたマンガの紹介や、
それにまつわるエピソードなど、ヒット以前の苦労を重ねていた時期の話も。
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by taku_yoshioka | 2011-12-23 23:59

soul mate

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こんなに心をかき乱すような作品になるような始まり方ではなかったのに、
今や個人的に"にこたま"と双璧を成す青春漫画になってしまった"みかこさん"。

それぞれ違う相手と付き合っているみかこと緑川だが、
二人になったときに流れる空気がお互いのパートナーと違い過ぎる。
陳腐な言い方になるが、運命的なものを感じるのだ。
同じ学校に暮らし、同じ街で生活していれば、偶然出くわすこと自体は珍しくない。
ただ、その頻度やそこでの会話の内容、温度が合いすぎていて…。

そして、こういう展開になってくると、二人が一緒になる
「ハッピーエンド」を想像してしまうのは自然なことなのだが、
もしそうなったら…と考えると今度はナオが居た堪れない。
"天使なんかじゃない"の原田志乃もこういうタイプで、
悪い子じゃないし、積極的でずる賢いんだけど、主人公にはなれない。
(その点、加藤くんはあまり根がいいやつな感じが出ていないのが絶妙。)

前巻の帯コピー『始めて付き合ったのは「好きだった人」でしたか?』が、
ますます突き刺さってしまう展開となりつつある本作。
読んでいて胸が苦しくて、せっかく単行本を待ったのに一話ずつしか読めません。
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by taku_yoshioka | 2011-10-26 00:15 | comic

The Girl and The Boy Who Leapt Through Time

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今日マチ子にとって、単行本ではおそらく初となるSF短編。

本作では、彼女が得意としているリリカルな表現だったり
セクシュアルな仕草の切り取りだったりはあまりなく、比較的淡々と物語は進んでいく。
キャラクターの描写に重点が置かれているという言い方も出来るかもしれない。

そんな中、タイムスリップのトリガーがグレープフルーツというのは、
らしくていいかなと思う("センネン画報"ブログのURLも「juicyfruit」だし)。
瑞々しさや甘酸っぱさのモチーフとしてぴったりだ。
単なる一アイテムとは言え、この物語の中ではなかなかに多弁。

冒頭でSF短編と書きはしたが、
いわゆるSF物としての面白さや真新しさはないので過度な期待はなさらぬよう。
(今日マチ子ファンにそんな人はいないと思うけど。)

構えず読んで、構えず楽しむべし。
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by taku_yoshioka | 2011-09-16 00:04 | comic

green green

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1巻の感想として、今日マチ子が描き出す登場人物の特徴について少し触れました。
これについてもう少し踏み込んだ話。

"みかこさん"を除くその他の作品においては
驚く程キャラクター(特に男の子)に魅力や個性がない。
と言うか、そもそもキャラクターと言えるほど差別化されていない。

そして、その無個性さは「どこにでもいる高校生」を
記号的に表しているために与えられているのではなく、
単純に作家の思い入れの希薄さから来ていると考えた方がしっくり来る。

また、マンガに限らず表現者が異性について描写するとき、
普通は多かれ少なかれ理想の王子様やお姫様の一部(または全部)の要素が
キャラクターの中に見え隠れするもの。主人公クラスであればなおさら。
しかし、今日マチ子はそれすらもあまり感じさせない
(たとえば"センネン画報"の男女が交わるシーンには、
どちらの視点でも成立する奇妙なバランスの良さがある)。
なんと言うか、湿っぽい表現に長けてる割に
「人」に対してドライな感じがするのです。

そんな中"みかこさん"の主要人物の一人である緑川ワタルは、
実に少女マンガらしいというか、
個人の嗜好が多少なりとも垣間見えるキャラクター。

ただ、実際に今日マチ子氏が緑川のような男の子を好きかはあまり重要ではなく、
もしかしたらそうかなと思わせるだけの「匂い」が
キャラクターに備わっていることがポイント(あとは読み手が勝手に勘繰ってくれる)。

さて、その緑川。
線の細さと目が隠れる程の長さの前髪は藤原基央を思い出させるようなルックス。
人とつるむことは少なく自分の世界に入っていることが多いものの、
好きなことに対してはのめり込み突如としてテンションが高くなることもある。
腕に負った傷のせいで体育大会では活躍できずに一人美術室に。
と言った具合に「いかにも」な要素を併せ持つ、なかなかニヤニヤ度の高いキャラ設定。
万能でもなんでもないあたりがかえってリアルで良いです。
下手すると主人公のみかこさんよりもしっかりと描かれているかもしれない。

リップバームはなくなって、冬が来る。
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by taku_yoshioka | 2011-01-25 00:02 | comic

boy meets girl

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女子高生「みかこさん」の日常で起こる些細な出来事と心の揺れを、
彼女を取り巻く何人かの友人や家族との関わりを交えながら
得意とする淡い色彩とメタファーを用いて描く。

つまり、語弊を恐れず言えば"センネン画報"の少女Aと少年Aから
匿名性を取り去ったらどうなるか、という作品。

少年と少女に「市村みかこ」と「緑川ワタル」という名前を与えることにより、
経験した場面や感情の蓄積が可能となる。
"センネン画報"でカーテンの向こうにいた二人と七夕の飾りつけをしていた二人は
必ずしも同一の二人ではないかもしれない(一方で同一の二人かも知れない)が、
便覧の貸し借りが行われ、リロンのライブを共有したのは、みかこと緑川以外の誰でもない、
これは、普通の物語であれば前提以前のような話だが、今日マチ子作品では珍しい事。

果たして、二人の恋路は、進路は、どうなっていくのか。
明確なアイデンティティが付与されたキャラクターの設定によって、
今日マチ子作品史上初めてこう思う。

続きが気になる!
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by taku_yoshioka | 2011-01-17 00:09 | comic

Ok, it's the stylish century


by takuyoshioka

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