predawn

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[※ネタバレあり]

自身の10代最後の約1年半を綴った自伝漫画。

あとがきにもある通り、虚飾なく素直に当時の出来事や思いを振り返っているのだが、
これが『シティライツ』を筆頭とした作品世界の登場人物を地で行くような微妙さ。
プロボクサーになりたいと告げて東京に出て来たはいいものの、
実際はそんなことなど毛頭考えていなかった大橋裕之が、
体面のためにジムに通いながら漫画家としてのデビューに向けて奮闘する姿が描かれる。

青春時代を題材としていることで、若さゆえの不安や絶望は忌憚なく描写され、
同時に僅かに射した光にすがる中、大橋少年の心を駆け巡るのは夢と現実の喜怒哀楽。

このピュアさこそが本作の肝なのだが、だからこその毀誉褒貶はあって然るべし。
過去作からも分かるように、大橋裕之が希代のストーリーテラーであることは疑いようが無い。
そしてそれは換言すると作り話の天才ということになり、
読者に湧き上がる感情もフィクションであるが故の安心感と共に受け入れられていたはずだ。
なのに、ここにきてこの生々しさである。何しろ、まったくもって本当のことなのだから、
単に「あるあるネタ」として笑い飛ばすのも若干憚られる。
それほどに、大橋少年が過ごした10代最後の夏の経験はシリアスだ。

だがその強い思いは、ストレートに胸を打つ。
サブカルコミックシーンの新しい旗手のような扱いをされ、
飄々としたタッチで紡がれている物語がシュールの一言で片付けられがちな彼だが、
そのバックボーンに確かに存在した青くがむしゃらな気持ちは純粋に美しい。

また、どのような漫画家に感銘を受けていたのか、
なぜトーンや書き込みの少ない作風に至ったのかなどへの言及は、
大橋作品を紐解く上での貴重な資料にもなる。
一度見たら忘れられない特徴的なあの「目」の描き方についても、
その発想のプロセスについてネタばらししてくれているので必見だ。

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by taku_yoshioka | 2013-12-08 23:26 | comic

Ok, it's the stylish century


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