黙殺はスムーズに理解へと移る リリックの解読が日本各地で進む(時代は変わる Pt.1/THA BLUE HERB)

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シーンに大いなるインパクトを与えた1stアルバムの発表後、
THA BLUE HERBは「業界」からの自立を目論んで
自身が主催するレーベル、THA BLUE HERB RECORDINGS(以下TBHR)を立ち上げた。
設立後数枚の12インチをリリースしたのだが、それらをコンパイルしたのが本作となる。

当時の状況を振り返りながら話をすると、日本語ラップヘッズからの注目が集まったトピックは
アナログオンリーでリリースされていた"時代は変わる"の初CD化だった。
かつてはボブ・ディランも発信したこのメッセージを、THA BLUE HERBは3部組の大作に。
"Pt.1"は挑戦者としての自身のアティチュードを明確にする攻撃的なナンバー。
強烈なパンチラインが止む事無く繰り出され、WACK MCを一掃する。
THA BLUE HERB自身は望んでいなかったところかもしれないが、
翌年の2ndのリリース後は一つの階級における王者側として迎え撃つ立場になったので、
挑戦者時代に残した最後期の楽曲とも言えるだろう。

そして、"Pt.2・3"では一転して過去の革命の歴史を紐解きつつ現在(の日本)への警鐘を鳴らす。
史実やそれらにまつわるエピソードについて扱うこと自体がかなりデリケートな行為であり、
そもそもの情報・知識やそれに対して向けられた思考の正確性は難しいところではある。
ただ一つ間違いないのは、このようなテーマを扱い、強引であったとしても説得力を持たせ、
筋の通った自分の意見をラップとして昇華できる存在は、BOSS THE MC以外にそうはいないということ。
10年以上前の「原発の安全計画は幻覚 その場しのぎの宦宮どもの体たらく」のラインは今も耳に痛い。

これら2曲のラップ・チューンが本作のフックとなっていることは一つのポイントだ。
だが、このコンピレーションやTBHRの存在意義としては、インスト曲の方が大きいくらいかもしれない。
盟友であるJUN-GOLDやWA-CHALL、そして当時は珍しかったO.N.Oのソロ名義のビートは、
作り手こそ違えどアジア〜オリエンタルの趣が感じられ、TBHR周辺に独特のシーンがあったことがわかる。
北の大地、その地下深く、東京とは違ったムーブメントが(全国的な認知度という意味では)密かに胎動していたのだ。

そういった意味で"ANNUI DUB [THANK YOU VERY MUCH MY FRIEND] -LAST DAY DJ SAVES MIX-"は
ラスト・トラックとしてはこれ以上ない一曲。
フロアとそこに流れる音楽、そして仲間に対する思いを込めたポエトリー・リーディングは、
超攻撃的なBOSS THE MCが感謝の気持ちを素直に現した当時としてはレアなバース。
そして、曲の終盤でシャウトアウトされる耳慣れないアーティストの数々は
北海道に根ざしてTHA BLUE HERBとともにいくつもの夜を編み上げてきた戦友に他ならない。
果たしてBOSS THE MCが「シーンの3年先」と断言したものが
なんだったのかを知る手がかりが詰まった一枚となったのだ。

また、あくまでもボーナスとは言え束の間の静寂の後に放たれるシークレットトラックも強烈。
ピークを迎えようとしていたBOSS THE MCの瑞々しいライブパフォーマンスを聴くことができる。
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by taku_yoshioka | 2012-11-01 01:01 | music

Ok, it's the stylish century


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